「おしゃれで開放的なリビングにしたい」「限られた土地でも広く感じる家を建てたい」
注文住宅を考える中で、そんな理想を叶える選択肢として注目されるのが「スキップフロア」です。インスタグラムなどで見かけるユニークな空間に、心を奪われている方も多いのではないでしょうか。
しかし、その魅力的なデザインの裏で「スキップフロアはやめたほうがいい」「住んでみたら後悔した」という声も耳にします。
この記事では、スキップフロアのある注文住宅を検討しているあなたが、後悔しないための全知識を専門家の視点から徹底解説します。メリット・デメリットから、具体的な間取りアイディア、費用や税金の話まで、この記事を読めばスキップフロアのすべてが分かります。
この記事の目次
スキップフロアとは?構造と定義
まずは、スキップフロアがどのようなものか、基本的な知識から確認していきましょう。
スキップフロアの基本的な構造を図解
スキップフロアとは、建物の一つの階層の中に、複数の高さの異なるフロア(床)を設け、それらを短い階段でつないだ間取り・構造のことです。フロアを半階ずつずらして配置していくイメージを持つと分かりやすいでしょう。
壁やドアで空間を細かく区切るのではなく、床の高さで空間をゆるやかに仕切るのが最大の特徴です。これにより、家全体が立体的につながり、視線が抜けることで実際の面積以上の広がりを感じさせることができます。
ステップフロア・中二階との違い
スキップフロアと似た言葉に「ステップフロア」や「中二階」があります。それぞれの違いを理解しておきましょう。
- ステップフロア
基本的にはスキップフロアとほぼ同じ意味で使われる言葉です。ハウスメーカーや工務店によっては、リビング内に少し段差を設ける程度の小規模なものをステップフロアと呼ぶこともありますが、明確な定義の違いはありません。 - 中二階
1階と2階の中間など、特定の階と階の間に設けられたスペースを指します。家全体の構造としてフロアをずらしていくスキップフロアとは異なり、部分的に中間階を設けるイメージです。ロフトなども中二階の一種と捉えられます。
建築基準法における床面積の扱い
スキップフロアを検討する上で知っておきたいのが、建築基準法における「床面積」の扱いです。特に、天井高が1.4m以下のスペースは、一定の条件下で延床面積に算入されないというルールがあります。
このルールをうまく活用することで、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)が厳しい土地でも、収納などのスペースを+αで確保できる可能性があります。この点は、後の「費用と固定資産税の考え方」で詳しく解説します。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
「やめたほうがいい」後悔する5つの理由
魅力的に見えるスキップフロアですが、なぜ「やめたほうがいい」と言われるのでしょうか。採用してから後悔しないために、まずはデメリットを正直に、そして詳しく見ていきましょう。
夏は暑く冬は寒い?空調効率の問題
スキップフロアの家は、空間が一体となっているため空調効率が悪くなりやすいというデメリットがあります。暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へと移動する性質があるため、フロア間で温度差が生まれやすくなります。
- 夏: 1階の冷房が効きにくく、最上階に熱がこもって暑くなる。
- 冬: 1階部分に冷気がたまり、足元が寒く感じられる。
光熱費が思ったより高くなってしまった、という後悔の声は少なくありません。
音や匂いが家中に伝わりやすい
壁やドアが少ないため、生活音や声、キッチンからの料理の匂いなどが家全体に伝わりやすい点も後悔のポイントです。
家族の気配を感じられるのはメリットですが、裏を返せばプライバシーの確保が難しいということでもあります。子どもが寝ている時間にテレビを見たり、夫婦でゆっくり話したりしたい時に音が気になってしまうかもしれません。また、Web会議など静かな環境が必要な場合にも注意が必要です。
バリアフリー非対応で老後の生活が不安
家中に短い階段が点在するスキップフロアは、完全なバリアフリーに対応することが困難です。若いうちは気にならなくても、年齢を重ねて足腰が弱くなった時や、病気・怪我で車椅子生活になった場合に、家の中の移動が大きな負担になる可能性があります。
「老後は住み替えを考えている」など、将来のライフプランを明確にしておかないと、「こんなはずではなかった」と後悔する原因になります。
建築コストや工事期間が増加する傾向
スキップフロアは、通常の総二階建ての住宅に比べて構造が複雑になるため、建築コストが割高になる傾向があります。
設計が複雑になることによる設計料の増加や、特殊な施工技術が必要になることによる工事費の上昇などが主な理由です。また、それに伴い工事期間も長くなる可能性があります。予算に余裕がない場合は、慎重な検討が必要です。
耐震性への懸念と構造計算の重要性
床の高さが異なる複雑な構造は、地震の際に力がどのように伝わるかを予測しにくく、耐震性の確保に特別な配慮が必要です。
もちろん、建築基準法で定められた耐震基準を満たすことは必須ですが、そのためには精密な構造計算が不可欠です。スキップフロアの建築実績が少ない会社に依頼すると、安全性の面で不安が残る可能性があります。
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後悔だけじゃない!スキップフロアのメリット
デメリットを知ると不安になってしまうかもしれませんが、もちろんスキップフロアにはそれを上回るほどの魅力的なメリットがたくさんあります。
空間が広く見える開放的なリビング
壁が少なく縦にも横にも視線が抜けるため、実際の面積以上に空間が広く感じられます。特にリビングにスキップフロアを取り入れると、帖数以上の開放感が得られるでしょう。日当たりが悪い、敷地が狭いといった土地の弱点をカバーできる可能性も秘めています。
スキップフロア下を活かした大容量収納
スキップフロアによって生まれる床下の空間を、大容量の収納として活用できるのは大きなメリットです。天井高を1.4m以下に抑えることで、延床面積に算入されない「蔵」のようなスペースを作ることが可能です。季節物やアウトドア用品、子どものおもちゃなど、かさばる物をすっきりと片付けられます。
家族の気配を感じる一体感のある間取り
どこにいても家族の気配を感じられるため、自然なコミュニケーションが生まれやすいのもスキップフロアの魅力です。例えば、キッチンで料理をしながら中二階のスタディスペースで宿題をする子どもを見守ったり、リビングでくつろぎながらスキップフロア上の書斎にいるパートナーと会話したり。家族がつながる一体感のある暮らしが実現できます。
採光と通風を確保しやすい設計
フロアの高さに変化があるため、様々な方角や高さから光を取り入れる窓を設計しやすくなります。壁が少ないことで光が家の奥まで届き、家全体が明るい印象になります。また、高低差を利用して空気の流れ(通風)を計画的に作ることで、心地よい風が通り抜ける家になります。
傾斜地や狭小地を有効活用できる
一般的な住宅では造成が必要になる傾斜地も、スキップフロアならその高低差を活かした設計が可能です。土地の造成費用を抑えつつ、ユニークな間取りを実現できます。また、都心部の狭小地など、横に広さを取れない場合でも、縦の空間を有効活用して豊かな居住スペースを生み出すことができます。
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注文住宅の間取りアイデア【坪数・テーマ別】
ここでは、スキップフロアを取り入れた注文住宅の具体的な間取り実例を、坪数やテーマ別にご紹介します。
【20坪台】狭小地でも広く見せる間取り

20坪台の家では、スキップフロアが縦の空間を最大限に活用する切り札になります。
- ポイント
リビングとダイニングの床に段差をつけ、視覚的に空間を分けることで、ワンルームでもメリハリのある空間に。 - アイデア
階段の途中をスタディコーナーにしたり、リビングの床を一段下げて「ピットリビング」にしたりすることで、狭さを感じさせない工夫が光ります。
【30坪台】リビング階段で家族がつながる家

ファミリー層に人気の30坪台では、リビング階段とスキップフロアを組み合わせるのがおすすめです。
- ポイント
リビングから半階上がった場所にキッズスペースを配置。親の目が届く範囲で子どもを遊ばせることができます。 - アイデア
スキップフロアの下をすべて大容量の収納(蔵)にすることで、生活スペースをすっきりと保てます。
【40坪台】書斎や趣味室を設けた間取り

40坪台の余裕のある広さなら、スキップフロアでより豊かなプライベート空間を作れます。
- ポイント
リビングから数段上がった場所に、こもり感のある書斎や趣味の部屋を配置。家族とのつながりを感じつつ、集中できる空間が生まれます。 - アイデア
吹き抜けとスキップフロアを組み合わせることで、さらにダイナミックで開放的な空間演出が可能です。
【平屋】縦の空間を活かした間取り
意外に思われるかもしれませんが、平屋とスキップフロアの相性も抜群です。
- ポイント
ワンフロアの平屋に高低差をつけることで、空間に変化が生まれます。小屋裏空間を有効活用して、ロフトや収納スペースを作るのが定番です。 - アイデア
床の一部を下げてシアタールームにしたり、逆に一部を上げて畳コーナーにしたりと、暮らしを楽しむ工夫が広がります。「平屋は単調になりそう」というイメージを覆す、遊び心のある間取りが実現できます。
スキップフロア下の空間活用アイデア集

スキップフロアの最大の魅力の一つが、床下の空間活用です。ここでは具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
- 大容量の集中収納(蔵)
季節家電やスーツケース、防災グッズなどをまとめて収納。居住空間を常にすっきりと保てます。 - 子どもの秘密基地
天井の低いこもり感のある空間は、子どもにとって絶好の遊び場になります。おもちゃを広げてもリビングが散らかりません。 - ワークスペース・書斎
半個室のような集中できる空間として活用。在宅ワーク用のデスクを置くのに最適です。 - 趣味のスペース
オーディオセットを置いて音楽鑑賞を楽しんだり、コレクションを飾るギャラリーにしたりと、趣味を楽しむ空間に。
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デメリットを克服する設計の工夫
これまで見てきたデメリットも、設計段階で工夫を凝らすことで、その多くを克服・軽減することが可能です。
全館空調やシーリングファンで温度差を解消
空調効率の問題は、家の性能と設備でカバーするのが最も効果的です。
- 全館空調システム
家全体の温度を均一に保つことができるため、スキップフロアのデメリットを根本から解決できます。初期費用はかかりますが、快適性は格段に向上します。 - シーリングファン・サーキュレーター
空気を循環させることで、上下の温度ムラを解消するのに役立ちます。吹き抜けと組み合わせる場合は必須のアイテムです。
断熱材・遮音材で快適な居住性を確保
家の断熱性・気密性を高めることは、温度差対策の基本です。高性能な断熱材を使用したり、気密性の高い施工を行ったりすることで、外気の影響を受けにくく、冷暖房の効きやすい家になります。
また、音の問題が気になる場合は、壁や床に遮音材を入れたり、音が響きにくい素材を選んだりといった対策も有効です。
手すりや滑りにくい床材で安全性を高める
階段が多いスキップフロアでは、安全対策が欠かせません。
- 手すりの設置
デザイン性の高いアイアン手すりや、視線を遮らないアクリルパネルなどを採用すれば、安全性と開放感を両立できます。 - 床材の工夫
滑りにくい素材の床材を選んだり、階段に滑り止めをつけたりする配慮が重要です。 - 階段の設計
階段の勾配を緩やかにしたり、踏み板の面積を広く取ったりすることで、上り下りの負担を軽減できます。
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費用と固定資産税の考え方
夢のマイホームを実現するためには、お金の話も避けては通れません。スキップフロアに関わる費用と税金について解説します。
スキップフロアの建築費用・坪単価の目安
前述の通り、スキップフロアは構造が複雑なため、一般的な住宅に比べて坪単価が5万円〜10万円程度高くなる可能性があります。ただし、これはあくまで目安であり、設計内容や採用する設備、施工する会社によって大きく変動します。
総額でどのくらい変わるのか、必ず複数の会社から詳細な見積もりを取り、比較検討することが重要です。
固定資産税はどうなる?床面積の算定方法
固定資産税は、家屋の評価額に基づいて算出されます。この評価額に影響するのが「延床面積」です。基本的には、延床面積が広くなるほど固定資産税は高くなると考えましょう。
スキップフロア自体が直接的に税金を高くするわけではありませんが、床面積の算定方法が少し特殊になるため、設計段階でハウスメーカーに確認しておくことが大切です。
容積率緩和の条件「高さ1.4m」のルール
ここで重要になるのが、先ほども触れた「容積率緩和」のルールです。以下の条件を満たす階(小屋裏、天井裏、床下など)は、延床面積に算入されません。
- 天井の高さが1.4m以下であること
- そのスペースの水平投影面積が、直下の階の床面積の1/2未満であること
このルールをうまく利用して、スキップフロア下に天井高1.4m以下の収納スペースを設ければ、床面積を増やさずに(=固定資産税への影響を抑えつつ)収納力をアップさせることが可能です。
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スキップフロアに関するよくある質問
最後に、スキップフロアを検討中の方からよく寄せられる質問にお答えします。
子どもの転落防止対策は必要?
はい、小さなお子さんがいるご家庭では必須の対策です。
階段や吹き抜け部分には、子どもがすり抜けられないデザインの手すりや、転落防止ネットなどを設置しましょう。リビング階段の入り口にベビーゲートを設置するなどの工夫も有効です。安全対策については、設計士と十分に相談してください。
家具の配置や掃除は大変?
階段が多いため、家具の搬入や模様替えは大変になる可能性があります。
大きな家具を置く場所は、設計段階で決めておくとスムーズです。また、掃除については、ロボット掃除機が段差で止まってしまうため、フロアごとに動かすか、コードレスのスティッククリーナーを活用するなどの工夫が必要です。
スキップフロアに向いている人・土地とは?
メリット・デメリットを理解した上で、以下のような方や土地に特におすすめです。
- 向いている人
- 開放的でデザイン性の高い空間が好きな人
- 家族とのコミュニケーションを大切にしたい人
- 収納スペースをたくさん確保したい人
- 将来のバリアフリー性よりも、現在の暮らしの楽しさや個性を重視する人
- 向いている土地
- 土地の広さに限りがある狭小地
- 高低差のある傾斜地
- 北側道路など、採光に工夫が必要な土地
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
まとめ
スキップフロアは、「空調効率が悪い」「老後が不安」といったデメリットがある一方で、「開放的な空間」「豊富な収納」「家族との一体感」など、他の間取りでは得られない多くの魅力を持った選択肢です。
後悔しないための最大の秘訣は、デメリットを正しく理解し、その対策を設計段階でしっかりと講じることです。そして、それを実現するためには、スキップフロアの設計・施工実績が豊富なプロのパートナーを見つけることが何よりも重要になります。
この記事で得た知識をもとに、ぜひモデルハウスや見学会に足を運んで、実際のスキップフロアの空間を体感してみてください。あなたの理想のライフスタイルに、スキップフロアが本当に合っているのかどうか、きっと答えが見つかるはずです。

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家を建てるならロゴスホーム

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