「家の床を張り替えたいけど、どんな素材がいいんだろう?」「DIYでテーブルの天板をおしゃれにしたいな」
そんな風に考えているあなたが「リノリウム」という言葉にたどり着いたのかもしれません。どこかで聞いたことはあるけれど、クッションフロアや塩ビシートと何が違うのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。
リノリウムは、実は150年以上の歴史を持つ、天然素材から作られた人にも環境にも優しい素材です。その魅力と正しい知識を知れば、あなたの家づくりや家具選びの強力な選択肢になるはずです。
この記事では、リノリウムの基本的な知識から、よく混同される塩ビシートとの違い、メリット・デメリット、具体的な使い方まで、専門家が分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、リノリウムがあなたの理想の空間づくりに合う素材かどうかがきっと分かります。
この記事の目次
リノリウムとは?天然素材の床材
まず、「リノリウムとは何か?」という基本から見ていきましょう。リノリウムは、単なる床材の一種ではなく、その成り立ちに大きな特徴があります。
亜麻仁油を主原料とする自然素材
リノリウムとは、亜麻仁油(あまにゆ)を主原料に、松樹脂、コルク粉、木粉、石灰岩といった天然素材を混ぜ合わせて作られる建材です。これらの原料を麻布(ジュート)に圧着してシート状に加工します。
化学製品である塩化ビニルなどとは異なり、廃棄された後も生物分解されて土に還る、サステナブル(持続可能)な素材として近年再び注目を集めています。自然素材ならではの温かみのある質感も魅力の一つです。
抗菌性や耐久性が高い特徴
リノリウムの主原料である亜麻仁油には、天然の抗菌・抗ウイルス作用があります。そのため、表面に付着した細菌の増殖を抑制する効果が期待でき、衛生面が気になる場所にも適しています。
この優れた特性から、古くから病院や学校、公共施設などの床材として広く採用されてきました。また、非常に丈夫で、土足での歩行にも耐えるほどの高い耐久性も兼ね備えています。
「リノリューム」との表記の違い
インターネットで検索していると、「リノリウム」と「リノリューム」という2つの表記を見かけることがあるかもしれません。
「リノリウム」と「リノリューム」は、どちらも同じものを指す表記揺れです。発音の違いによるもので、製品や性能に違いはありませんので、どちらで覚えても問題ありません。本記事では「リノリウム」に統一して解説します。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
塩ビシート・クッションフロアとの違い
リノリウムを検討する上で、最も気になるのが「塩ビシートやクッションフロアとの違い」ではないでしょうか。見た目が似ているため混同されがちですが、素材から性能まで全く異なるものです。
比較表でわかる素材・価格・性能の違い
リノリウムと、塩ビシートの代表格であるクッションフロア、長尺シートの違いを一覧表にまとめました。
項目 | リノリウム | クッションフロア(塩ビシート) | 長尺シート(塩ビシート) |
---|---|---|---|
主原料 | 亜麻仁油、コルクなど天然素材 | 塩化ビニル樹脂 | 塩化ビニル樹脂 |
価格帯(材料費) | やや高め(約5,000円~/㎡) | 安価(約2,000円~/㎡) | 中程度(約3,000円~/㎡) |
耐久性 | 非常に高い(土足OK) | 低い(へこみやすい) | 高い(土足OK) |
耐水性 | △(長時間濡れるとNG) | ◎(非常に高い) | ◎(非常に高い) |
抗菌性 | 天然の抗菌性あり | 抗菌加工品が多い | 抗菌加工品が多い |
デザイン性 | 無地・マーブル調が中心 | 木目・石目などプリント柄が豊富 | 無地・石目調が中心 |
メンテナンス | 中性洗剤を使用 | 中性洗剤を使用 | 中性洗剤を使用 |
このように、リノリウムは天然素材、塩ビシートは化学製品という根本的な違いがあります。耐久性ではリノリウムと長尺シートが優れ、価格の手頃さやデザインの多様性ではクッションフロアに軍配が上がります。
見た目での簡単な見分け方
リフォーム前の床材がどちらか分からない場合、簡単な見分け方があります。
最も確実な見分け方は、シートの裏側を確認することです。
- リノリウム
裏側は原料を圧着している麻布(ジュート)の網目模様が見えます。 - 塩ビシート(クッションフロアなど)
裏側はビニール素材や不織布(フェルトのようなもの)になっています。
また、表面の質感にも違いがあります。リノリウムはマットでしっとりとした自然な風合いですが、塩ビシートはツヤがあり、プリントされた柄であることが多いです。
長尺シートとの違い
「長尺シート」もよく聞く言葉ですが、これもリノリウムとは異なります。
長尺シートとは、主に塩化ビニル樹脂で作られた、耐久性の高いシート状の床材を指します。名前の通りロール状で長さがあり、店舗やマンションの廊下、病院など、土足で歩行する場所に多く使われます。
リノリウムと用途は似ていますが、長尺シートは化学製品であるという点が決定的な違いです。
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リノリウムのメリット・デメリット
どんな素材にも良い点と注意すべき点があります。リノリウムのメリット・デメリットを理解して、最適な選択をしましょう。
メリット:高い耐久性と抗菌・抗ウイルス性
リノリウムには、他の床材にはない優れたメリットが多くあります。
- 高い耐久性
非常に丈夫で傷がつきにくく、へこみ跡も復元しやすい性質があります。適切なメンテナンスを行えば20〜30年は持つと言われ、長く愛用できます。 - 天然の抗菌・抗ウイルス性
主原料の亜麻仁油が持つ力で、衛生的でクリーンな環境を保ちやすいです。小さなお子様やペットがいるご家庭にも安心です。 - 環境への優しさ
天然素材から作られ、製造時のCO2排出量も少なく、廃棄後は土に還ります。環境に配慮した素材を選びたい方に最適です。 - 豊富なカラーバリエーション
自然素材ながら、顔料を混ぜることで多彩な色表現が可能です。落ち着いたアースカラーから鮮やかなビビッドカラーまで、インテリアに合わせて選べる楽しさがあります。
デメリット:耐水性の注意点とアルカリ性洗剤
一方で、リノリウムならではの注意点も存在します。
- 水に弱い
天然素材であるため、長時間水に濡れたまま放置すると、シミや膨れ、カビの原因になることがあります。水回りで使用する場合は、こぼした水をすぐに拭き取る習慣が大切です。 - アルカリ性に弱い
アルカリ性の洗剤やワックスを使用すると、表面が変色したり溶けたりする恐れがあります。掃除には必ず中性洗剤を使いましょう。 - 施工の難易度
素材が硬く伸縮しにくいため、DIYでの施工はやや難易度が高めです。特に床一面に敷き詰める場合は、プロの施工業者に依頼するのが安心です。 - 価格が比較的高め
クッションフロアなどの塩ビシートに比べると、初期費用は高くなる傾向にあります。ただし、その分耐久性が高いため、長期的な視点で見ればコストパフォーマンスは決して悪くありません。
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リノリウムの用途別施工事例
リノリウムは床材としてだけでなく、家具の素材としても人気があります。具体的な使用事例を見てみましょう。
床材としての使用事例(キッチン・トイレ・病院)
キッチン・トイレ
デザイン性の高さと、油汚れなどが染み込みにくく掃除がしやすい点から、キッチンやトイレの床材としても人気です。ただし、前述の通り水濡れには注意が必要なため、マットを敷くなどの工夫をするとより安心して使えます。
病院・学校・公共施設
リノリウムが最も多く使われているのが、病院や学校、図書館といった公共の場です。その理由は、圧倒的な耐久性と、天然の抗菌・抗ウイルス性が高く評価されているためです。多くの人が土足で行き交う過酷な環境でも、その性能を十分に発揮します。
家具・天板での使用事例(ファニチャーリノリウム)
最近では、家具の素材としてリノリウムが注目されています。これを「ファニチャーリノリウム」と呼びます。
- テーブルやデスクの天板
マットで落ち着いた質感は、指紋がつきにくく、光の反射を抑えるため目に優しいのが特徴です。書き物やPC作業をするデスクの天板に最適です。 - キャビネットや棚の表面材
既存の家具にファニチャーリノリウムを貼るだけで、簡単におしゃれな北欧風の家具にリメイクできます。DIY好きの間で特に人気が高まっています。
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リノリウム製品の選び方
実際にリノリウムを選ぼうと思ったとき、どのような基準で選べば良いのでしょうか。メーカーや形状、厚みなど、選ぶ際のポイントを解説します。
主要メーカー「フォルボ」の特徴
リノリウムのメーカーとして、まず名前が挙がるのがスイスの「フォルボ(Forbo)」社です。
フォルボは100年以上にわたりリノリウムを製造している世界的なトップメーカーで、高品質かつデザイン性に優れた製品を数多く展開しています。特に「マーモリウム」という製品シリーズは、200色以上の豊富なカラーバリエーションを誇り、世界中の建築家やデザイナーから支持されています。日本国内でリノリウムを探す場合、まずフォルボ社の製品をチェックするのが良いでしょう。
(参考:https://www.forbo.com/flooring/ja-jp/)
シートとタイルの形状から選ぶ
リノリウムには、大きく分けて2つの形状があります。
- シート
ロール状で提供される、幅の広いシートタイプです。継ぎ目が少なく仕上がるため、掃除がしやすく、防水性に優れています。広い面積に施工する場合に適しています。 - タイル
正方形や長方形のタイル状のタイプです。複数の色を組み合わせて市松模様などデザイン性の高い床を作れるのが魅力です。万が一傷がついても、その部分だけを交換できるメリットもあります。
用途に合わせた厚みの選び方
リノリウムには様々な厚みがありますが、用途によって適した厚さが異なります。
- 床材用
住宅の床材として使用する場合、2.5mm厚のものが一般的です。耐久性と歩行感のバランスが良く、最も広く使われています。商業施設など、より耐久性が求められる場所では3.2mm厚のものが使われることもあります。 - 家具用(ファニチャーリノリウム)
テーブル天板や建具に使用するファニチャーリノリウムは、2.0mm厚が主流です。加工しやすく、家具の表面材として最適な厚みです。
人気の色や柄のラインナップ
リノリウムのデザインは、塩ビシートのような木目調や石目調のプリント柄は少なく、素材そのものの色合いを活かした無地や、複数の色を練り込んだマーブル模様が中心です。
特に人気なのは、インテリアに馴染みやすいグレー、ベージュ、グリーンなどのニュアンスカラーやアースカラーです。マットで落ち着いた質感が、空間に洗練された印象を与えてくれます。
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DIYでの貼り方と費用相場
リノリウムを自分で施工(DIY)したいと考える方もいるでしょう。ここでは、DIYの手順や費用の目安について解説します。
床への施工方法と必要な道具
床へのリノリウム施工は、素材が硬いため難易度が高めですが、手順は以下の通りです。
- 下地処理
床の汚れを取り除き、凹凸があればパテで平らにします。下地が平らでないと仕上がりに大きく影響します。 - 採寸・カット
部屋の形に合わせてリノリウムを採寸し、専用のカッターや大きなハサミでカットします。 - 接着剤の塗布
床にリノリウム専用の接着剤をヘラで均一に塗布します。 - 貼り付け・圧着
空気が入らないように注意しながらリノリウムを貼り付け、ローラーでしっかりと圧着します。
【必要な道具】
メジャー、カッター、ヘラ、圧着ローラー、リノリウム専用接着剤など
家具天板への貼り方(ファニチャーリノリウム)
床への施工に比べて、家具の天板への貼り付けはDIYでも挑戦しやすいです。
- 天板のサイズより少し大きめにファニチャーリノリウムをカットします。
- 天板に専用の接着剤または強力な両面テープを貼ります。
- 空気を抜きながらリノリウムを貼り付け、ローラーで圧着します。
- はみ出した部分をカッターで綺麗に切り落として完成です。
材料費と業者依頼時の費用目安
費用は製品や施工範囲によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 材料費
リノリウム本体の価格は、1平方メートルあたり約5,000円〜10,000円が相場です。 - 業者依頼時の施工費
プロに依頼する場合、材料費に加えて施工費がかかります。施工費の目安は1平方メートルあたり約3,000円〜6,000円程度です。
切り売りで購入する方法
DIYで少量だけ使いたい場合は、切り売りで購入するのが便利です。
インターネットの専門店や、一部の大型ホームセンターなどで、10cm単位などで必要な長さだけ購入することができます。「ファニチャーリノリウム 切り売り」などのキーワードで検索すると、多くのオンラインストアが見つかります。
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リノリウムに関するよくある質問
最後に、リノリウムに関するよくある疑問にお答えします。
普段の掃除・手入れの方法は?
A. 乾拭きか、固く絞った雑巾での水拭きが基本です。
普段の掃除は掃除機やフローリングワイパーで十分です。汚れが気になる場合は、固く絞った雑巾で水拭きしてください。それでも落ちない汚れには、必ず中性の床用洗剤を薄めて使用しましょう。アルカリ性の洗剤は変色の原因になるため絶対に使用しないでください。
リノリウムの上から塗装できる?
A. いいえ、基本的にリノリウムへの塗装は推奨されません。
リノリウムの表面は油分を含んでおり密度が高いため、塗料がうまく密着せず、すぐに剥がれてきてしまいます。色を変えたい場合は、塗装ではなく張り替えを検討するのが一般的です。
賃貸住宅でも使える?
A. 条件付きで可能です。必ず事前に大家さんや管理会社に確認してください。
接着剤で完全に貼り付けてしまうと原状回復ができないため、賃貸住宅では基本的にNGです。しかし、接着剤を使わずに置くだけで施工できる「置き敷き」の方法や、剥がせるタイプの両面テープを使用することで、床を傷つけずに設置できる場合があります。トラブルを避けるためにも、施工前には必ず許可を取るようにしましょう。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
まとめ
今回は、天然素材の建材「リノリウム」について、その特徴から塩ビシートとの違い、具体的な使い方まで詳しく解説しました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- リノリウムは亜麻仁油などを主原料とする、人にも環境にも優しい天然素材
- 塩ビシート(クッションフロアなど)とは、素材も性能も全くの別物
- 高い耐久性と天然の抗菌性が最大のメリット
- 水やアルカリ性の洗剤に弱いというデメリットも理解しておくことが重要
- 床材だけでなく、家具の天板(ファニチャーリノリウム)としても人気
リノリウムは、初期費用は少し高いかもしれませんが、その耐久性や機能性、そして何より天然素材ならではの心地よさを考えれば、非常に魅力的な選択肢です。
この記事が、あなたの理想の空間づくりのための、最適な素材選びの助けとなれば幸いです。