注文住宅の間取りを考えていると、「納戸」や「S(サービスルーム)」といった表記を目にすることがありますよね。「普通の部屋と何が違うの?」「収納以外に使い道はあるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、納戸は単なる物置ではなく、工夫次第で書斎や趣味の部屋など、暮らしを豊かにする多目的なスペースに変わります。しかし、その特性を理解せずに計画すると「思ったように使えなかった…」と後悔につながることも。
この記事では、注文住宅における納戸の専門家として、以下の点を分かりやすく解説します。
- 納戸の正確な定義と、居室(部屋)との法的な違い
- 納戸を設けるメリット・デメリット
- 収納だけじゃない!驚きの活用アイデア7選
- 後悔しないための間取り計画のポイント
この記事を読めば、納戸のすべてが分かり、あなたの理想の家づくりに役立つヒントがきっと見つかります。
この記事の目次
納戸とは?建築基準法上の定義と意味
「納戸(なんど)」と聞くと、昔ながらの家にある暗い物置をイメージするかもしれません。しかし、現代の住宅における納戸とは、建築基準法で「居室」と認められないスペースのことを指します。
間取り図では「納戸」のほか、「S」や「サービスルーム」と表記されることもありますが、これらは基本的に同じ意味です。では、なぜ「居室」として扱われないのでしょうか。その鍵は、建築基準法にあります。
建築基準法で定められた「居室」の条件
人が長時間快適に過ごすための部屋を「居室」と呼びます。建築基準法第28条では、居室として認められるために、健康と安全を守るための「採光」と「換気」に関する厳しい基準が設けられています。
- 採光に必要な窓の面積
床面積の7分の1以上の大きさが必要 - 換気に必要な窓の面積
床面積の20分の1以上の大きさが必要
例えば、6畳(約9.9㎡)の部屋を居室とするには、採光のために約1.4㎡以上、換気のために約0.5㎡以上の有効な窓面積が求められます。
(参考:建築基準法 第二十八条)
納戸が「非居室」扱いになる理由
納戸は、この建築基準法が定める採光・換気の基準を満たしていないため、「非居室(居室ではない部屋)」として扱われます。
具体的には、以下のようなケースが納戸に該当します。
- 窓がまったくない
- 窓はあるが、基準の大きさを満たしていない
- 窓が隣の建物に近すぎて、有効な採光が確保できない
このように、法律上の理由から「洋室」や「寝室」といった表記ができず、「納戸」や「サービスルーム」という名称で区別されているのです。
サービスルーム(S)やDENとの違い
間取り図を見ていると、「サービスルーム」や「DEN(デン)」という言葉も出てきます。これらの違いは何でしょうか?
- 納戸とサービスルーム(S)
基本的に同じものです。不動産業界では、日本語の「納戸」よりも「サービスルーム」というカタカナ表記の方が聞こえが良いため、好んで使われる傾向があります。間取り図で「2LDK+S」とあれば、この「S」が納戸を指します。 - DEN(デン)
英語で「巣穴」や「隠れ家」を意味し、一般的に書斎や趣味を楽しむための小さな部屋を指します。建築基準法上の明確な定義はなく、納戸と同じく「非居室」として扱われることが多いですが、より趣味性の高いスペースとして表現される際に使われます。
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納戸と居室(部屋)の明確な違いを比較
納戸と居室の最も大きな違いは法律上の定義ですが、それによって実際の使い方や設置できる設備にも差が生まれます。ここでは、両者の違いを具体的に比較してみましょう。
法律上の違い_採光と換気の基準
前述の通り、最も根本的な違いは、建築基準法で定められた採光・換気の基準を満たしているかどうかです。
- 居室(部屋)
基準を満たしており、人が長時間過ごしても健康・安全が保たれる空間。 - 納戸
基準を満たしておらず、あくまで一時的な利用を目的とした空間。
この法的な違いが、用途や設備の制約に直結します。
用途と設備の違い_エアコンやコンセント
法律上の扱いの違いは、部屋の用途や設置できる設備にも影響します。
- 居室(部屋)
寝室、子ども部屋、リビングなど、人が生活の中心として長時間過ごすことが前提です。そのため、エアコン用のスリーブ(配管穴)や専用コンセント、テレビアンテナ端子などが標準的に設置されます。 - 納戸
主な用途は収納です。そのため、基本的な設備は照明と通常のコンセントのみというケースがほとんどです。エアコンの設置は想定されておらず、スリーブや専用コンセントがない場合が多いでしょう。
【比較表】納戸・居室・洋室の違い一覧
項目 | 納戸(サービスルーム) | 居室(洋室・和室など) |
---|---|---|
法的定義 | 非居室 | 居室 |
採光 | 基準を満たさない(床面積の1/7未満) | 基準を満たす(床面積の1/7以上) |
換気 | 基準を満たさない(床面積の1/20未満) | 基準を満たす(床面積の1/20以上) |
主な用途 | 収納、書斎、趣味のスペースなど(一時的な利用) | 寝室、子ども部屋、リビングなど(継続的な利用) |
主な設備 | 照明、コンセント | 照明、コンセント、エアコン用スリーブ、TV端子など |
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注文住宅に納戸を設けるメリット・デメリット
多目的に使える納戸は魅力的ですが、メリットだけでなくデメリットも理解した上で、自分のライフスタイルに本当に必要か判断することが大切です。
メリット1_収納スペースの大幅な確保
納戸最大のメリットは、大容量の収納スペースを確保できることです。
季節ものの家電(扇風機、ヒーター)や衣類、来客用の布団、アウトドア用品、子どものおもちゃなど、普段使わないけれど場所を取るものをまとめて収納できます。居室のクローゼットがスッキリし、生活空間を広く使えるようになります。
メリット2_固定資産税が安くなる可能性がある
納戸は居室ではないため、固定資産税の課税床面積に含まれず、税金が安くなる可能性があります。
固定資産税は、家屋の評価額に基づいて算出されます。居室として評価される部屋が少ないほど、評価額が抑えられる傾向にあるのです。ただし、自治体の判断基準によって扱いが異なる場合があるため、あくまで「可能性がある」と捉えておきましょう。
デメリット1_居室として利用できない制約
法律上、納戸を寝室や子ども部屋として継続的に使用することはできません。
採光や換気が不十分な環境で長時間過ごすことは、健康上のリスクを伴います。また、火災などの緊急時に避難が難しい場合もあります。「将来は子ども部屋に…」と考えている場合は、初めから居室の条件を満たすように設計する必要があります。
デメリット2_建築コストとスペースの確保
納戸は固定資産税の対象外になる可能性がある一方で、建物の床面積には含まれるため、当然ながら建築コストはかかります。
限られた予算と敷地面積の中で納戸を設けるということは、その分リビングや他の居室が狭くなる可能性もあるということです。本当に納戸が必要か、それとも他のスペースを優先すべきか、慎重に検討しましょう。
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納戸の賢い使い方・活用アイデア7選
納戸は単なる物置ではありません。工夫次第で、暮らしを豊かにする魅力的な空間に生まれ変わります。ここでは、注文住宅で実現したい賢い活用アイデアを7つご紹介します。
大容量のファミリークローゼット

家族全員の衣類をまとめて管理するウォークインクローゼット(WIC)ならぬ、「ファミリークローゼット」として活用するアイデアです。洗濯物をたたんだ後、各部屋に運ぶ手間が省け、家事動線が劇的に改善します。
集中できる書斎・ワークスペース

在宅ワークが増えた今、窓が少なく外部の視線が気にならない納戸は、集中できる書斎やワークスペースに最適です。防音性を高めれば、オンライン会議にも気兼ねなく参加できます。デスクと椅子を置き、コンセントを多めに設置するのが成功のコツです。
趣味の部屋・シアタールーム
プラモデル製作、楽器の練習、コレクションの展示など、趣味に没頭できる空間として活用できます。また、窓がない、あるいは小さいという特性を活かして、プロジェクターを設置すれば本格的なシアタールームに早変わり。好きな映画やライブ映像を大画面で楽しめます。
子どもの遊び場・プレイルーム
リビングに散らかりがちなおもちゃも、納戸をプレイルームにすればスッキリ片付きます。「自分たちだけの秘密基地」として、子どもたちも大喜びするでしょう。床に柔らかいマットを敷くなど、安全への配慮も忘れずに行いましょう。
室内干しができるランドリールーム
「天候を気にせず洗濯物を干したい…」という悩みを解決するのが、ランドリールームとしての活用です。換気扇を必ず設置し、除湿器を使えば、生乾きの臭いを防ぎながら効率的に衣類を乾かせます。アイロンがけができるカウンターを設けるのも便利です。
防災グッズや備蓄品のパントリー
食料品や日用品のストックを保管するパントリー(食品庫)としても、納戸は非常に役立ちます。さらに、災害時に備えた防災グッズや備蓄水をまとめて保管するスペースとしても最適。玄関やキッチンから近い場所に配置すると、いざという時にスムーズに持ち出せます。
ペット専用のスペース
ペットのケージやトイレ、フードなどを置く専用スペースとして活用するのも良いでしょう。来客時にペットを一時的に移動させたり、ニオイがリビングに広がりにくくなったりするメリットがあります。換気扇の設置は必須です。
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後悔しない納戸の間取り計画ポイント
納戸を有効活用できるかどうかは、計画段階の設計にかかっています。後悔しないために、押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
適切な広さの目安_1.5畳から3畳が主流
納戸の広さに決まりはありませんが、一般的には1.5畳から3畳程度の広さが主流です。
- 1.5畳~2畳
収納やパントリーとして十分な広さ。 - 2畳~3畳
書斎やファミリークローゼットとして活用しやすい広さ。 - 3畳以上
趣味の部屋など、より多目的に使えるが、その分コストもかかり、他の部屋とのバランスも重要。
何を収納したいか、どのように使いたいかを具体的にイメージして、最適な広さを決めましょう。
生活動線を考えた配置と出入り口
納戸をどこに配置するかは、使い勝手を大きく左右する重要なポイントです。
- 玄関の近く
ベビーカー、アウトドア用品、コートなどを置くのに便利。 - キッチンの近く
パントリーとして活用する場合に最適。 - 寝室や洗面脱衣所の近く
ファミリークローゼットやランドリールームとして使う場合に家事動線がスムーズ。
また、物の出し入れを考えて、出入り口は引き戸にする、扉の開く向きを工夫するなど、細部までこだわりましょう。
必要な設備_コンセント・照明・換気扇
納戸を快適な空間にするためには、設備の計画が不可欠です。最低でも「照明」「コンセント」「換気扇」の3つは設置しましょう。
- 照明
奥まで明るく照らせるよう、適切な位置と明るさの照明を選びます。 - コンセント
掃除機や除湿器、書斎として使うならPCやデスクライト用など、用途に合わせて複数設置すると後々困りません。 - 換気扇
湿気やカビを防ぎ、空気を循環させるために必須の設備です。特に窓のない納戸では必ず設置してください。
収納物に合わせた可動棚の設置
壁一面に棚を造り付けてしまうと、収納したいものが変わった時に対応できません。棚の高さを自由に変えられる「可動棚」を設置するのがおすすめです。
収納する物の大きさに合わせて棚の高さを調整できるため、スペースを無駄なく最大限に活用できます。ホームセンターなどで手軽に購入できるパーツでDIYすることも可能です。
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注文住宅の納戸に関するよくある質問
最後に、注文住宅で納戸を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
Q. 納戸にエアコンは設置できますか?
A. 設置自体は可能ですが、推奨はされません。
エアコンの設置を禁止する法律はありません。しかし、納戸は換気能力が低いため、エアコンを稼働させても空気がうまく循環せず、効きが悪かったりカビが発生しやすくなったりします。また、新築時にエアコン用の配管穴や専用コンセントが用意されていないことが多く、後付けするには追加工事が必要です。
どうしても設置したい場合は、必ず換気扇を併用し、空気を循環させるようにしてください。スポットクーラーやサーキュレーターを利用するのも一つの手です。
Q. 後からリフォームで部屋にできますか?
A. 簡単ではありませんが、不可能ではありません。
納戸を居室にリフォームするには、建築基準法の採光・換気の基準を満たす必要があります。具体的には、壁を壊して基準を満たす大きさの窓を設置するなどの大規模な工事が必要になります。
また、建物の構造や法規制によっては工事ができない場合もあります。リフォームを行う際は、必ず建築確認申請が必要になるため、専門の業者や建築士に相談しましょう。
Q. 納戸で寝るのは違法ですか?
A. 違法ではありませんが、安全上おすすめできません。
納戸で一時的に仮眠する程度であれば問題ありませんが、継続的に寝室として使用することは、建築基準法の趣旨に反します。換気が不十分な空間で長時間過ごすことは健康に影響を与える可能性があり、火災などの際に危険が伴うため、避けるべきです。
Q. 窓は設置しなくても良いですか?
A. はい、納戸には窓の設置義務はありません。
納戸が「非居室」である理由そのものが、基準を満たす窓がないことです。そのため、窓を全く設置しないことも可能です。ただし、湿気対策や空気の入れ替えのために、小さな窓や換気扇を設置することを強くおすすめします。
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まとめ
今回は、注文住宅における納戸について、部屋との違いから賢い活用法、計画のポイントまで詳しく解説しました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 納戸とは
建築基準法の採光・換気基準を満たさない「非居室」のこと。 - 居室との違い
法律上の定義が異なり、エアコンなどの設備にも差がある。 - メリット
大容量の収納確保や、固定資産税が安くなる可能性がある。 - デメリット
寝室など居室としては使えず、建築コストもかかる。 - 成功の鍵
動線を考えた配置と、コンセント・換気扇などの適切な設備計画が重要。
納戸は、あなたのライフスタイルに合わせて自由にカスタマイズできる、可能性に満ちたスペースです。この記事で得た知識を活かして、ぜひあなたの注文住宅に最適な「プラスアルファの空間」を計画してみてください。
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家を建てるならロゴスホーム

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