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新築住宅の温度管理設備として、年々普及が広がっている全館空調。
しかし、導入を考えている人の中には
「電気代はどれくらいかかるのか」
「個別エアコンと比べてどちらが得なのか」
と判断を悩む方もいます。
本記事では、全館空調について電気代の目安や個別エアコンとの比較について解説します。全館空調のメリットやデメリット、電気代を抑えるコツについてもわかりやすくまとめました。
これから新築を建てる予定で、全館空調の電気代が気になる方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
そもそも全館空調とは?
全館空調とは、建物全体を専門の機器で一括して冷暖房・空気清浄する空調システムのことです。
一般的なエアコンは各部屋のみを温度調節しますが、全館空調は家中を均一な温度に保ちます。
全館空調は、1台または数台の専用空調器具で適温の空気をつくり、天井や壁の裏に配管したダクトを通じて各部屋に空気を送る仕組みです。
複数のメーカーから、さまざまな方式の機種が販売されています。
ロゴスホームで提案している全館空調は、上階と床下にそれぞれ1台ずつ冷暖房機器を設置し、季節によって空調方法を切り替えるタイプです。
夏の暑い時期は、上部階に設置した冷房機から涼しい空気を全階に届けます。
冬の寒い時期は、床下に設けた暖房機から暖かい空気を送り室内全体を暖めます。温かい空気が上昇する特性と、床面を温める輻射熱効果の活用です。
多くの機種は24時間365日電源を落とさない自動運転を前提としています。
休まず稼働させて建物全体の温度と空気循環を管理するシステムです。
全館空調のメリット
全館空調には、いくつものメリットがあります。主な利点として以下の3つが挙げられます。
- ・1年中、家のどこにいても快適な温度で過ごせる
・清潔な空気環境で生活できる
・室内外のデザインがスッキリする
全館空調の最大のメリットは、家中の温度差が少ないことです。リビングはもちろん、廊下や洗面所まで同じ温度にできるためヒートショックなどの健康リスクを抑えられます。
多くの全館空調システムには空気清浄機能や換気機能が備わっており、花粉やPM2.5などを除去して、常に新鮮で健康的な空気を室内に供給できるのが特徴です。
エアコン本体や配管が露出しないため、間取りやインテリアの自由度が高まります。屋外に設置する室外機の数も減らせるので、建物の外観もスッキリし、より洗練された印象の住まいを実現できるでしょう。
全館空調のデメリット
一方で全館空調にはいくつかのデメリットも存在します。主な注意点として以下の3つが挙げられます。
- ・導入費用が高い
・メンテナンスに手間と費用がかかる
・部屋ごとの温度調整が難しい
全館空調の設置には一般的な家庭用エアコンよりも高額な費用がかかります。メーカーや種類により差があり、安いものでは100万前後、高いものでは300万円ほどの導入費用が必要です。
全館空調を効果的に機能させるには、建物自体の高い気密性と断熱性が不可欠です。断熱材や気密工事の強化により、建築コストが上がる傾向があります。
1台が止まっても他の部屋で過ごせる一般のエアコンと異なり、万が一故障すると家中の空調が止まってしまうため、メンテナンスへの配慮も欠かせません。
こまめなフィルター掃除が必要であったり、機種によっては数年おきに専門業者に定期メンテナンス依頼が必要だったり、維持の負担もあります。
部屋ごとに温度を調整しづらい点もデメリットです。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
全館空調の電気代は年間・月々いくら?目安を紹介
全館空調を導入するとどのくらい電気代がかかるのかも気になりますよね。
ここでは一般的な年間・月々の電気代の目安を紹介しましょう。
【全国の相場】
月々8,000〜15,000円程度
【北海道札幌市の相場】
月々10,000〜12,000円程度
全館空調の電気代は、様々な要素で変動します。相場は月々8,000円〜15,000円程度が目安とされています。
寒冷地である北海道札幌市では、全館空調を採用した住宅の電気代は月々10,000円〜20,000円、年間20万円〜30万円程度(給湯や照明など他の電気使用分も含む)になるケースが多いです。
全館空調システム単体の電気代が、月平均10,000円〜12,000円前後かかっている計算になります。
寒冷地以外の地域では電気代をさらに抑えられるでしょう。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
全館空調 vs 個別エアコン:電気代は結局どっちがお得?徹底比較
「全館空調は電気代が高い」というイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
むしろ、使い方によっては、個別エアコンの方が月々の電気代が高額になることもあります。
その背景には「エアコンの電気消費特性」が関係しています。
エアコンの消費電力が最も大きくなるのは、運転開始直後の「室温を調整しているとき」です。
各個室への出入りの際に、それぞれのエアコンでON/OFFが繰り返されると、電力消費の大きい「立ち上がり運転」が何度も行われることになり、結果として総消費電力が増加します。
その点全館空調は、常に快適な温度を維持しているので、エネルギー負荷が大きくなる稼働タイミングがほとんどありません。
総務省が実施した家計調査によると、2024年の全国の4人世帯の電気代の月々の平均は12,008円と発表されています。
地域別の電気代平均で見ても、北海道エリアの二人以上世帯の平均は12,328円です。
地域 | 電気代(月平均) |
全国 | 12,008円 |
北海道 | 12,328円 |
参照:家計調査2024年 家計収支編 二人以上の世帯 を元に作成
前述の全館空調を導入した住宅の平均と大きな差がないことから、全館空調が個別エアコンよりも電気代が高くなるとは限らないとわかります。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
全館空調の電気代が高くなる(or 安くなる)理由
全館空調も個別エアコンも、どちらも使い方次第で高額な電気代になる可能性があります。
ここでは、電気代に影響を与える6つの要素について解説します。
住宅の断熱性・気密性
空調の電気代を左右する最大の要因は、住宅の断熱性と気密性です。
断熱性・気密性が低いと外気の影響を受け、冷暖房効率が大きく下がってしまいます。
たとえば、断熱等級6の家は、断熱等級4の家と比べて暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね30%削減できるとされています。
等級7 | 省エネ基準比エネルギー消費量-40% |
等級6 | 省エネ基準比エネルギー消費量-40% |
等級5 | ZHM基準 |
等級4 | 省エネ基準 |
参照:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」p8より
そもそも全館空調は高断熱高気密住宅への設置を前提に設計されている設備です。壁の中の断熱材や窓サッシなども高い性能のものを採用しなければ、全館空調の良さを十分に機能できません。
全館空調を導入するなら、住宅自体の断熱性・気密性もチェックしましょう。
家の大きさや間取り、窓の配置
家の広さ・間取り・窓の配置も、光熱費に影響します。
たとえば、家の延べ床面積が大きいほど空調でカバーする空間が増え、消費電力も増加します。吹き抜けやリビング階段など、大きな空間を作る間取りも空調効率が下がる要因です。
特に窓は、室内と室外の熱の出入りが大きいパーツで、夏場は68%、冬場は50%の熱が窓を経由して失われているといわれます。遮熱性能のある複層ガラスの窓は、日射の熱を半分ほどカットできることがデータでも公表されています。
窓の種類 | 日射侵入率(室外からの日射熱が室内に届く割合) |
単板ガラス(3mm) | 88% |
複層ガラス(3mm+空気層+3mm) | 79% |
遮熱複層ガラス(Low-E 3mm+空気層+3mm) | 41~50% |
参照:(一社)日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センター「開口部の断熱」より日射侵入率の比較
光熱費を削減するには、間取りや窓計画の検討が欠かせません。
採用した全館空調システムの種類と性能
全館空調システムには、ダクト式や床下冷暖房型など複数の方式があり、それぞれ性能や省エネ性が異なります。
たとえば床下冷暖房型は、床下に冷暖房設備を設置し、床面に設けた吹き出し口から空気を家じゅうに送る仕組みです。温かい空気が上昇する仕組みを利用しているため、特に冬は効果的に部屋を温められます。寒冷地など冬場のエネルギー負担が大きい地域では、より高効率な温度管理ができるでしょう。
他にもさまざまな種類の空調システムがあります。複数の機種を比較検討し、最適な機器を選んでください。
設定温度や運転モード、ライフスタイル
空調の設定温度や運転モードの工夫でも、電気代を抑えられます。
反対に24時間連続運転が基本の全館空調で、自己判断でオンオフを繰り返してしまうのは電気代を増やす要因です。
全館空調に限らず、冷房時の設定温度を1℃上げる、暖房時は1℃下げるだけで、消費電力を節約できます。
機種によっては家族の在宅時間や部屋ごとの使用状況に合わせてゾーン制御やセーブモードのあるタイプもあります。
ライフスタイルに合わせて無駄な空調運転を減らし、賢く電気代を節約しましょう。
住んでいる地域の気候
当然ながら地域の気候は電気代に大きく影響します。
寒冷地では冬季の暖房負荷が高く、電気代が上がりやすい傾向があります。
冷房よりも暖房の方がエネルギー負担が大きいことが理由です。
たとえば北海道は、全国平均よりも年間の光熱費負担が大きいと統計データでも公表されています。
地域 | 電気代/年間平均 | 電気代/1月 |
全国 | 12,008円 | 12,376円 |
北海道 | 12.328円 | 15,967円 |
参照:家計調査2024年 家計収支編 二人以上の世帯 を元に作成
寒冷地では、冬場にエアコンだけでなく灯油ストーブやガス式暖房も併用している家庭も少なくありません。
住んでいる地域の気候に合わせた空調システム選びが大切です。
契約している電気料金プラン
電気料金プランの選択も、ランニングコストに直結します。
現在は電力自由化によって幅広い企業から契約先を選べるため、家庭の使用状況に合ったプラン選びが電気代節約のカギです。
電力会社ごとにさまざまな料金プランが提供されており、電気使用量が多い家庭向けのプランや、昼間の不在が多い家庭向けのプランなど、多様な選択肢があります。
北海道電力を例に挙げると、ポイントを貯めたい方向けの「エネとくポイントプラン」、毎月の使用量が多い家庭向けの定額料金「エネとくLプラン」、冷房用エアコンのある家庭向けの「エネとくシーズンプラス」といった料金プランがあります。
参考:ほくでん 料金メニュー
家庭のライフスタイルや全館空調の運転時間帯に合ったプランを選びましょう。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
全館空調の電気代を賢く安く抑えるには?
全館空調の電気代を抑えるためには、次のような工夫や対策が効果的です。
・高気密高断熱の住宅を建てる
・機種の正しい使用方法を守る
・気候と生活スタイルに合った電力プランを選ぶ
全館空調は断熱性・気密性の高い住宅への設置が前提です。全館空調の種類はもちろん、住宅の性能も気にかけて家づくりの依頼先を判断してください。
また、正しく全館空調を使用することで、無駄な電力消費を防げます。
たとえば、機種の指定通りにフィルター清掃を行い、オンオフを切り替えず自動運転機能をしっかり活用しましょう。
電気料金プランの見直しも、全館空調の電気代削減に有効です。家庭のライフスタイルや地域の気候に合わせて最適なプランを選択しましょう。
工夫次第で、全館空調の快適さを維持しながら無理なく電気代を抑えられます。
失敗したくない方へ



知りたかったたった
1つのこと

手に入れる方法
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
まとめ
全館空調の導入で必ずしも電気代が高くなるとは限りません。
個別エアコンと比較しても大きな差がない場合や、かえって安く抑えられるケースもあります。
家庭の電気代は、住宅の断熱性や気密性、使用する全館空調システムの性能、間取り、さらに生活スタイルや電力プランの選び方によって大きく変動するためです。
全館空調の電気代は、一般的な戸建て住宅で月々8,000〜15,000円ほどが相場といわれます。電気代を節約するには、断熱性の高い住宅会社を選び、機種に合った正しい使い方を実践してください。
全館空調は、1年中家のどこにいても快適な空気環境で過ごせる人気の設備です。
導入するかどうか迷うなら、正しい知識と賢く電気代を節約する方法を心得て、じっくりご検討されることをおすすめします。