この記事の目次
マイホームを購入する際、多くの人が利用する「住宅ローン」。なかでも悩みやすいのが、金利タイプをどう選ぶかという点です。
住宅ローンには「変動金利」と「固定金利(固定期間選択型を含む)」の2種類があり、それぞれに異なる仕組みと特徴があります。自分たちに合わない金利タイプを選ぶと、将来的に返済額が大きく膨らんだり、家計を圧迫したりするリスクも。金利選びで失敗しないためには、違いを理解したうえで選ぶことが大切です。
本記事では、住宅ローンの金利タイプの基本から、それぞれのメリット・デメリット、比較ポイントや選び方のコツまで解説します。
住宅ローンの金利タイプごとのメリット・デメリット
住宅ローンには、大きく分けて「変動金利」と「固定金利(固定期間選択型を含む)」の2つの金利タイプがあります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、ライフプランやリスク許容度に合わせた選択が重要です。以下で詳しく見ていきましょう。
変動金利
住宅ローン利用者に多く選ばれている「変動金利」は、金融市場の動向に応じて金利が変動し、ローンを返している途中でも金利が上がったり下がったりする場合があります。特に初期金利が低いため、毎月の返済負担を抑えたい方にとっては、魅力的な選択肢です。
メリット | デメリット |
・初期金利が低く、返済額を抑えられる ・金利が低い状況が続けば、総返済額を少なくできる可能性がある ・繰上げ返済を積極的に行う人に向いている |
・金利が上昇すると返済額も増える ・返済額が将来的にどうなるか読みにくい ・長期的な家計管理に不安が残る |
住宅金融支援機構が公表している「住宅ローン利用者調査」によると、変動金利を選択している人は、住宅ローン利用者の約77.4%でした。ここ数年、同程度の水準で推移しており、低金利の状態が続いている点も背景のひとつと考えられます。
しかし、金利が上がる可能性もゼロではありません。「なんとなくお得そう」で選ぶのではなく、将来の暮らしを見据え、しっかり仕組みを理解したうえで選ぶことが失敗しないコツです。
※参考:
独立行政法人住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年10月調査)】※参考:
変動型住宅ローンの基準金利が4月上昇、対応策は 専門家に聞く – 日本経済新聞
変動金利の特徴
変動金利には、金利の見直しが定期的に行われるという特徴があります。しかし、金利が変わったからといって、毎月の返済額がすぐに変わるわけではありません。
これは、多くの住宅ローンで使われている「元利均等返済方式」という仕組みが関係しているからです。元利均等返済方式では、元金(借りたお金)と利息を合計した返済額を毎月一定に保つように計算されており、急な金利変動でも返済額が安定しやすくなっています。
さらに、変動金利には「5年ルール」や「125%ルール」もあり、利用者の家計に急な負担がかからないよう工夫されています。
ルールによって返済額の急な増加は抑えられますが、金利が上昇すると元金の減りが遅くなるなど、長期的な返済計画には注意が必要です。変動金利を選ぶ際には、制度を理解し、ご自身のライフプランやリスク許容度と照らし合わせて判断しましょう。
金利は半年ごとに見直される(例:4月・10月) ↓ ただし、「元利均等返済方式」で月々の返済額は一定 ↓ 金利が上昇しても、以下のルールにより返済額の変動が抑えられる → 返済額の見直しは原則5年ごと(=5年ルール) → 見直し後の返済額は、直前の1.25倍以内に制限(=125%ルール) |
Q.5年ルールとは?
A.金利の見直しは半年ごとに行われますが、実際に月々の返済額が変更されるのは「原則5年に1回だけ」という仕組みです。金利が上がったとしても、返済額が毎年頻繁に変わることはありません。
Q.125%ルールとは?
A.返済額が変更される場合でも、1回の見直しで増える金額は「直前の返済額の1.25倍以内」に制限されています。現在の返済額が10万円なら、次回変更後の上限は12万5千円までと、金利上昇による家計への急激な負担増を抑えられます。
固定期間選択型金利
住宅ローンの金利タイプの中でも、「固定期間選択型金利」は、安定と柔軟性のバランスが取れた選択肢として人気があります。
一定期間(例:10年間など)は金利が固定され、その後は変動か再固定かを選べる仕組みです。ライフプランに合わせて支出の安定を図りたい人にとっては有効な金利タイプといえます。
メリット | デメリット |
・一定期間(3・5・10年など)は返済額が安定し、家計管理しやすい ・金利上昇の影響を受けずに済む ・教育費などライフイベントの時期に合わせやすい |
・固定期間が終わると金利が上がる可能性がある ・初期金利は変動金利よりやや高め ・再選択のタイミングで判断に迷いやすい |
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
変動金利と固定金利の比較
変動金利と固定金利は、どちらの金利タイプにも一長一短があるため、正しく理解したうえで、ライフプランや家計状況に合った選択をしましょう。
変動金利の決まり方
変動金利は、市場の動向や日本銀行の政策金利に連動して定期的に見直される仕組みです。主に「日本銀行の政策金利」や「短期プライムレート」の動向に連動して決まります。
たとえば、日本銀行の政策金利は、景気の過熱や冷え込みに応じて上下する基準金利で、短期プライムレートにも影響を及ぼします。
短期プライムレートは、各銀行が最も信用の高い企業に貸し出す際の金利であり、変動金利の基準となるものです。
内容 | 金利への影響 | |
金利の設定タイミング | 借入後も年2回見直し(例:4月・10月) | 市場の変化を定期的に反映 |
市場金利との関係 | 短期プライムレートに連動 | 景気や政策金利の変動に敏感 |
金利水準 | 初期金利は低めに設定される | 景気低迷時に有利 |
金利変動の仕組み | 返済額は原則5年ごとに変更、125%ルールあり | 急激な返済額の増加を防ぐ緩和策あり |
固定金利の決まり方
固定金利は、ローン契約時にあらかじめ金利が決まり、一般的に、金融機関は「長期プライムレート」と呼ばれる金利を基準としています。
長期プライムレートは、銀行が信用力の高い企業に対して1年以上の融資を行うときに適用する金利です。10年物国債の利回り(=長期金利)の影響を受けて決まるため、市場の金利見通しや経済状況が固定金利の設定に反映されます。
変動金利よりやや高めに設定されることが多いものの、金利が上がっても返済額が変わらないという安心感があります。
内容 | 金利への影響 | |
金利の設定タイミング | 借入時に確定し、固定期間中は変動しない | 市場が動いても影響を受けない |
市場金利との関係 | 長期金利や将来の金利見通しに基づき設定される | 将来的な金利上昇時も変わらず安心 |
金利水準 | 変動金利よりやや高めに設定される | 借入当初から高めに固定される傾向 |
金利変動の仕組み | 固定期間終了後に変動 or 再固定を選択 | タイミングによっては再設定が必要 |
※参考:
プライムレートとは | 住宅ローン用語集 | ARUHI 住宅ローン | SBIアルヒ株式会社
※参考:
長・短期プライムレート(主要行)の推移 : 日本銀行 Bank of Japan
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
金利タイプの選び方
金利タイプの選択は、「どちらの金利が低いか」だけで判断するのではなく、将来の収入や支出の変化、返済計画、家計の安定性などを踏まえて検討する必要があります。
そのためには、今の家計状況だけでなく、ライフプランや金利変動への備えなど、多角的な視点で判断しましょう。
将来の金利動向予測
近年の住宅ローンは超低金利が続いていますが、今後もその状況が続くとは限りません。経済成長やインフレ、金融政策の転換により金利は上昇する可能性があります。
実際、以下のような動きが見られています。
・日本銀行は2024年にマイナス金利を解除し、利上げを実施
・エコノミストの多くが、年内に政策金利が0.75%まで上昇すると予測
→ 大手銀行は2025年4月から基準金利を年0.25%引き上げ
・フラット35の上限金利は3.9%台に到達
仮に金利が1%上昇した場合…
・借入額3,000万円/35年返済 → 月々約14,000円アップ
・総返済額 → 約600万円増加
「上がったら困る」と感じるなら、シミュレーションで金利上昇時の返済額を把握したり、固定金利の利用を検討したり、予備資金を確保しておくなど、早めの対策が安心です。
※参考:
マイナス金利解除、市場は冷静に受け止め 日銀一巡で関心は米政策に | ロイター
※参考:
ある委員「25年度後半に1%念頭に利上げ望ましい」=1月日銀会合要旨 | ロイター
※参考:
変動型住宅ローンの基準金利が4月上昇、対応策は 専門家に聞く – 日本経済新聞
※参考:
住宅金融支援機構 – 最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】
返済計画とリスク許容度
住宅ローンは長期間にわたる契約です。変動金利はメリットも大きい反面、将来の返済額が増えるリスクを受け入れる必要があります。
たとえば、金利が上昇すると次のようなリスクが生じる可能性があります。
・月々の返済額が増え、家計を圧迫する
・返済負担が増える一方で、元本の減りが遅くなる
・長期的に見ると、総返済額が大きく膨らむ
これらのリスクを踏まえたうえで、無理のない返済計画が大切です。以下の視点で、自分たちのリスク許容度を判断してみましょう。
こんな視点で判断を
・手取り月収の25~30%以内で返済が収まっているか
・ボーナス返済に頼らず完済可能か
・万が一の収入減でも耐えられる余裕があるか
変動金利はメリットも大きい反面、将来の返済額が増えるリスクを受け入れる必要があります。リスクに備えて予備資金を確保する、借入額を抑えるなど、安心できる返済計画を立てることが不可欠です。
ライフプランの変化
住宅ローンは「家を買うためのローン」であると同時に、「人生に寄り添うローン」でもあります。完済までの数十年の間には、出産、進学、転職、介護など、さまざまなライフイベントが訪れます。
こうしたライフイベントによって、収支のバランスが変化する可能性があります。
たとえば、出費が増える時期に収入が不安定になると、変動金利で返済額が増えた場合のリスクが大きく感じられることも。一方で、収入に余裕があるうちは金利の低さを活かして変動金利で進めるという考え方もあります。
つまり、金利タイプの選択は「今の暮らし」だけでなく、「将来どんな変化があるか」を見据えて考えることも大切です。
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
変動金利から固定金利への借り換え
住宅ローンは契約後でも、金利タイプを見直すことができます。近年は金利上昇の兆しも見られ、変動金利から固定金利への借り換えを検討する人が増えています。金利の急変による返済額の増加を避けたい人にとって、借り換えは家計を安定させる有効な選択肢です。
安心の仕組み「125%ルール」も万能ではない
変動金利には「125%ルール」があり、1回の見直しで返済額は最大1.25倍までに制限されます。しかし、金利が上がると、増えた利息を優先して支払うことになるため、元金の減りが遅くなります。その結果、返済期間が長引いたり、総返済額がふくらむリスクがある点には注意が必要です。
「なんとなく不安」なまま放置せず、条件に当てはまるなら一度シミュレーションをしてみたり、住宅ローンアドバイザーや金融機関の窓口で相談したりすることをおすすめします。
▶ 住宅ローンシミュレーション(住宅金融支援機構)
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
金利タイプを選ぶ上での重要なポイント
金利タイプの選択には「どちらが得か」ではなく、「どちらが自分たちの暮らしに合っているか」を基準にしましょう。
「変動金利でスタートし、浮いた返済分を資産運用に活用できた」
「固定金利にすれば良かったと、金利上昇後に後悔した」
など、金利の選択がライフスタイルや家計に大きな影響を与えたという声は少なくありません。
そこで、変動金利と固定金利、それぞれに向いている人の特徴をまとめました。どちらが自分たちに近いか、ぜひ参考にしてみてください。
変動金利が向いている人の特徴 | 固定金利が向いている人の特徴 |
・共働きで世帯収入にゆとりがある ・繰上げ返済を積極的に検討している ・金利リスクを理解し、備える余裕がある ・短期間で完済・借り換えの予定がある |
・子育てや教育費など将来の支出が見えている ・転職や休職など収入変動の可能性がある ・長期的に家計を安定させたい ・金利上昇に強い不安を感じる |
失敗したくない方へ



知りたかったたった
1つのこと

手に入れる方法
内観・外観イメージは具体的にお持ちでしょうか?
まとめ
住宅ローンの金利タイプ選びは、月々の支払いだけでなく、これからの家計や暮らし全体に大きく影響します。
変動金利は、初期の返済負担を抑えられる点が魅力ですが、将来の金利上昇によって返済額が増えるリスクの考慮が必要です。固定金利は、金利変動に左右されず返済額を一定に保てる安心感があるものの、変動金利に比べると金利水準はやや高めに設定される傾向があります。
金利は、どちらが「お得か」よりも「自分たちに合っているか」で選ぶことが大切です。仕組みやリスクを理解して、安心して返していける住宅ローンを見つけましょう。